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『ちはやふる』を大人買い、徹夜で一気読み(笑)

[2011年09月27日]

「泣くな おれはまだ 泣いていいほど懸けてない
"悔しい"だけでいい」

涙を流して悔しさをかみしめるには"資格"がいるのかもしれない―
自分はそんなに何かに"懸けた"ことがあるか―

そんなことを思わせるシーンに思わずドキッとしました。

平林亮子です。
『ちはやふる』を大人買いして、徹夜で一気読みしてしまいました。
これは末次由紀先生の描く、競技かるた(百人一首)に青春をかけた高校生の物語。
主人公の千早(ちはや)が幼馴染の太一(たいち)達と一緒に百人一首に取り組むという少女マンガ。
2011年10月からアニメ化される予定です。

昔、末次先生の
『この胸の素直』
『君のための何もかも』
『Promise』
など、1996年ころに出た読み切りをいくつか読んだことがあったので、久しぶりに末次先生の読んでみようと思い手に取りました。
過去の単行本もたぶん実家の本棚に残っていると思います。

末次先生のマンガはとにかくキャラクターの瞳が綺麗で、昔も今も、その魅力は変わらないように感じます。

私の記憶に間違いがなければ、過去に読んだ上記の短編は、どの作品もメインキャラがうじうじぐずぐずした性格で、その優柔不断さゆえに周囲を傷つけていって、そういうところにいらだちを覚えるのに最後まで目が離せないという、10代20代のもやもやした日々を題材にしていました。
特別な目新しさのない設定やストーリーなのになぜか吸い込まれていく、という不思議な空気を持っている作品ばかりでした。
単行本の最後のおまけマンガも面白くて、アシスタントをしてくれた友人達の紹介などもほのぼのしていてよかったな。
あと、たしか「へにょへにょまん」とかいう隠れキャラを本編のマンガに時々登場させていたような......。

ところで1996年当時の作品、今では絶版になっているらしいです。
なんと2005年頃、「末次先生が他の作品の構図を盗用している」という事実が発覚したそうなのです。
そのため、連載も中断、それ以前の作品は絶版になり、マンガ界から姿を消していたのです。

そんなところから少しずつ漫画家としての活動を再開し、奇跡の復活を果たした作品がこの「ちはやふる」でした。
競技かるた(百人一首)の世界を描いた、非常に興味深い内容です。
過去に私が読んだ短編のようなうじうじ(?)したところはなく、さわやかで登場人物もとても魅力的。
競技かるたの音とスピード、対戦相手との知的な心理戦、百人一首をはじめとする歌の世界の奥深さ、そこに人生を賭けた人たちの想いまで盛り込まれ、笑いあり、涙ありの世界がそこに広がっているのです。
私が持っていた百人一首のイメージと違って、競技はスポーツそのもの。マンガの中で選手たちは体力づくりのため走り込みもするんですよ!

冒頭に記したようなドキッとさせられるシーンも散りばめられています。

「負けと向かい合うのは大人になっても難しい
でも......あの子たち だれも慰め合わない
(慰め合うことなく、真正面から負けと向き合っている)」
と教え子の高校生達を見守る先生の言葉も印象的でした。

太一(主人公の幼馴染)が千早(主人公の女子高校生)へのへの恋心にはっきりと気付くシーンも、心の奥から理屈を超えてあふれ出てくる想いが伝わってきて優しくて切ない。

そして何より、ナンバーワンよりオンリーワンなどと言われるこの時代に、ナンバーワンを目指して自分との戦いを続ける登場人物たちの姿に胸が熱くなるのです。爽快です!

また『エースをねらえ!』などでも描かれている、「勝負」を超えたところにある無我の境地、ゾーン状態に入れそうで入れない主人公の葛藤なども面白い。
百人一首を通じて、心技体すべてが成長していく登場人物たちから目が離せません。

『ヒカルの碁』が囲碁ブームを起こしたように、『ちはやふる』が百人一首ブームを引き起こしているようですよ♪

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